2019年02月27日
毎日、お絵描き三昧。小品を一日平均2点の割り合いで描いているけれど時には4点の日もあるけれど、次の日は0点。寝ためができないように描きためもできない。
ドナルド・キーンさんが亡くなった。生前、肖像画の依頼を受けていたけれど、「横尾さんは死んだ人ばっかり描くので、もう少し先き伸ばしにします」と言われて、いつ描けばいいのかなと待っている間にとうとう亡くなってしまった。
自画像を沢山描いたけれど、まだ僕は生きている。むしろ描いた方が長生きするんじゃないかな。
ウォーホルに描いてもらおうと思って、値段交渉などしていたのに、向こうが先きに亡くなってしまった。
ウォーホルはシルクスクリーンで紙に2点、キャンバスに1点、その内の紙に描いた1点をこちらが貰うことになっていた。確かウン100万円で、そう高いと思わなかった。あの場ですぐ写真を撮ってもらっておけばよかった。
〆切のある仕事は文章位で、絵の〆切はほとんどないけれど、5月の個展のために新作を描くことにしたので、自分で〆切を作ってしまった。だから毎日職人さんになったみたいで、セッセと描いている。
絵を早く沢山描くコツは上手になまけることだ。ただただ描くだけじゃダメで、如何になまけるかだ。よく仕事をする人は、よくなまける人だと思う。
2019年02月21日
絵を描くというよりは、僕の場合は絵を作るといった方に近い。描きながら、場面を構成していく。組み立てていく。だから作っていくという感じだろうなあ。
カルティエの肖像画制作のあと、また別の肖像画シリーズにとりかかっている。明けても暮れても肖像画! さて、何枚描いたかな。200〜300枚位かな? ウォーホルは20世紀の肖像画家だった。一体何人描いたのだろう。
ウォーホルは写真を使用。こちらは絵だ。それも同じスタイルの絵が描けないので100人描いたら100通りのスタイルになる。僕の中の100人の画家が描いている。
僕にはこれというキャラクターがないので、相手(肖像)によって絵のスタイル(キャラ)が変る。1000人描いたら1000種類のスタイルができる。だから僕はスタイルのないスタイルがある。
イギリスの美術家で先年亡くなったリチャード・ハミルトンという作家がいた。彼が生前、遺作のつもりで発表したポラロイドの自身のポートレイトがある。世界の128人のアーティストによって撮られた写真をテイトモダンで発表した。
そこにぼくが撮ったことになっている彼のポートレイトがある。1971年12月5日に彼の写真を撮ったと写真に記録されている。この日、彼を撮ったのはジョンとヨーコ、それにニーベルソンの3人だ。
ところが、この日は僕はロンドンにいないし、第一、ハミルトンにも会っていない。なのになぜ、僕が彼の写真を撮ったことになっているのか。すでにテート・モダンとスペインの美術館で発表している。
128人の中にはジャスパーもラウシェンバーグもウォーホルも彼を撮ったという写真が展覧会に出展されている。当然ぼくが撮ったことになっているのも出展されている。
128人の内で何人かは本当に彼を撮った者もいるかも知れないが、ほぼこの128枚のポラはフェイクであると思う。いやフェイクである。ないことをあることのように見せかけたのだ。
ところが、最近スペインの美術館から「僕の撮ったハミルトンの写真」の著作に関する問合せがあった。あの写真は本当に僕が撮ったと信じているのだ。だったら、僕も騙されてあげようと思って「あれは僕の写真」と返答した。
あるいは、あれは最初からフェイクだと美術館も知った上で、128人のアーティストに僕に送った同じ手紙を出しているのかも知れない。
騙し、騙され、キツネとタヌキの騙し合いだと思えば結構面白いんじゃないかな。
近い内に僕の名義でハミルトンの写真(誰が撮ったか不明)を版画作品にして発表しようかと思っている。
2019年02月18日
絵を描きながら、一方で版画を制作している。版画を始めたのは1969年からだから50年になる。その大半がシルクスクリーン版画である。今度タマの絵を版画にアレンジして新たに制作することになった。
2019年02月12日
「奇想の系譜」展が東京都美術館で始まった。若冲、蕭白、芦雪、又兵衛、山雪、白隠、其一、国芳の江戸絵画のミラクルワールド8人衆ってとこかな。この内何人知ってます? また作品を見て、すぐ名前が出ますか?
この展覧会にちなんで、オリジナル作品(B全倍サイズ)を描きました。限定販売だそうです。
荒俣宏さんが以前書かれた「ヨコオ論タダノリ」の在庫を探したが見つからず、ネットで古書があることがわかったけれど、1万5千円也。活字本なのに凄い高値がついたもんだ。
2019年02月05日
だから自分の考えが拡散して、まとまらなくなった時はこの本を読む。そうすると精神の軌道修正が上手くいく。この本は自著ではあるが、取り上げた本には自信がある。そんな中から好みの本を見つけてもらいたい。
僕は時々自著「本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた」を読み返す。ここには133冊の書評が納められている。その全てが書きたくて書いた本で、どの本からも影響を受けた。そしてここには僕の考えの全てが入っている。
2019年02月04日
彼の絵に対して、あゝしろ、こうしろという意見をする人が多いらしいが、自分のしたいことをするべきだ。答えは彼の中にあるんだから。
香取慎吾君がアトリエに。彼は100点の絵を100種類の様式で描く。1000点描けば1000点の様式になるだろう。驚異の多重人格──ではなく多重画格だ。