2012年7月31日
5時半起床。朝食のあと6時にアトリエへ。久し振りに歩く。 夏の間は自転車を利用することが多いので、運動不足になる。さすが早朝は車も人も少なく、涼しくて気持がいい。アトリエに着いた途端パンツをはきかえたために鍵を忘れ、取りに帰る。やれや倍歩かされた。もう一度歩くのは嫌だから自転車で行く。まだ早いのでアトリエの蟻はまだ寝ているだろうと思ったら、蟻は結構早起きだ。日中の猛暑を避けて早朝に働いているようだ。

2012年7月25

イチローがヤンキースに移籍した。環境を変えることで刺激を求めているというが、ぼくも変化に迫られると環境を変えることにしている。物質的環境を変えるだけではなく、ちょっとした考え方を変えることも環境を変えることだと思う。でないと沼の水のようにすぐ淀んでしまう。いつもサラサラ血液が身体中を巡っているようにしたいものだ。大きい環境の変化を起こしたイチローに学ぶことが多くありそうだ。とにかく注目しよう。

2012年7月24日
この間、眼鏡を失くして探し廻っていたら、今日タマが玄関で大声 で泣くので出て見たら、いつもあげている野良用のエサ皿の横でタ マが眼鏡を踏んづけていた。毎日2回もエサをあげているの に、そこにあったのには驚くしかなかった。レンズが片方はがれて いたけれどなぜここに! 別に不思議話にはしたくないけれ ど、誰が見てもわかるところにあったことが、やっぱり不思議だ。

2012年7月19日
今日は世田谷美術館で開催中の「村山知義の宇宙」展を観る。村山の多岐にわたる作品をバラバラに見てたが、初めてその全貌に触れて、その水準の高さに驚く。地下にボーシャという軽食レストランができ、酒井館長、学芸員の塚田さんとクレープのランチを食べる。午後は郷里の加古川線を走るラッピングカーの写真集の打ち合わせ。写真は織作峰子さんに撮ってもらった。クレープのせいだとは思わないが夕方胸やけがする。

2012年7月17日
津波のあった被災地から帰ったら、やたらと被災地の記事やテレビが目に飛び込んでくる。以前から報道されていたけれど、見過ごしていたのだろう。やはり身体を通過させないものは、単なる情報で終ってしまう。なんでもそうだ。テレビやインターネットで解った気になっている。そしてそれで間に合う知識から生まれる芸術は過去の偉大な芸術とは全く別物だ。さて、久し振りの旅行は疲れたけれど、早目の夏休みのような気分でもあった。絵の方は遅々と進んでいる。

2012年7月12日
来年、福島県立美術館での個展が決定しているので、その前に気仙沼から陸前高田市、周辺など災害地を廻る予定。娘はボランティアで花を植える作業に参加したと言っていたが、場所を聞き忘れた。午前7時に家を出る。

2012年7月11日
この間会った小泉今日子さんのポートレイトを描く。「Numero Tokyo」誌の彼女の特集に掲載される絵だが、雑誌のために絵を描くのは何年振りか、いやウン10年振りかも知れない。ぼくのポートレイトは本人に喜ばれたためしがないが、どうかな?天気がいいと蟻が出てくるので来客に踏まれないか心配だ。交通標識を地面に描いているが、いちいち蟻の命のことまで心配してくれる人はほとんどいない。明日から岩手と福島に行くので来客がないので安心だ。

2012年7月10日
昨日は久し振りに野川へ。カワセミを求めてバードウォッチャーが列をなしている。リツイートでカワセミはいないと言った人がいたが、野川にはいるんです。スカイブルーとオレンジのきれいな鳥です。縞模様の赤いヘビもいます。野川は野性の宝庫。

2012年7月9日
昨夜喘息の発作が起こり、病院へ。新型吸入薬の使用が難しい。係の薬剤師も困り果てる。
目が痛いので眼科へ。軽い結膜炎。白内障がでかかっているらしい。差した目薬は視界の光量がうんと増えた感じで、ゴダールの初期の映画みたいに真白になって眩しくてサングラスを掛けないと危なくて歩けない。4時間続いた。
最近はコマ切れ睡眠になってしまった。絵もコマ切れ制作になってしまった。思考もコマ切れ。食事もコマ切れ。猫に似てきた。
わが家の猫は半年前までは1階のヒトだったが、いつの間にか2階のヒトになって滅多に1階に下りてこなくなった。用がある時は2階から人間(夫婦)を呼びつける。わが家の人間はいつの間にか猫の下僕になってしまった。
いつも柄谷行人さんの書評を読むのが愉しみだ。興味の対象は異なるが、柄谷さんは難しい問題でも実に平易な語り口だ。だから思わずその問題に引き込まれてしまう。難しい問題は難しく語るしかないと言った小林秀雄とは対極だ。
書評の出る日の新聞はどことなく鬱とうしい。自分の書いた書評を読む前に他の人の書評を先きに読み、「上手いなあ」と感心する。そして最後に自分の書評を読んで、凄く落ち込む。

2012年7月6日
軽井沢で喘息が治るかと思ったが相変らず咽はゼーゼー言っている。今日は中央公論で来年早々に出版される小説「ぶるうらんど」と「ポルトリガトの館」など3作、計4作をまとめた文庫本「ぶるうらんど/横尾忠則幻想小説集」の打合せをする。午後は平野啓一郎さんと久し振りで例によって長電話。小説と絵画は異るがお互いにその相異点は変らないので、まあ、ぼく的には絵画の空隙を小説的世界によって埋められるので、2人の会話はいつも充実している。

わが家のエサを当てにくるデブ野良猫には今日からエサは禁止だ。猫屋敷でたっぷり食べた挙句わが家のエサを当てにさせるのはこちらに問題があった。
アメリカの美術誌の取材でドイツのカメラマンがポートレイトを撮りに来た。夜アトリエの真暗闇の中で撮った。「これがぼくのやり方だ」という態度をつら抜く日本の雑誌なんかのカメラマンには滅多にない。

2012年7月5日
別の隣の家は俳優の橋爪功さんの家で、わが家のテレビがよく見えるそうだ。こちらからは何も見えない。夜中に目が覚めると橋爪さんの家は何時でも電気が煌々とついている。いつ寝られるのだろう。

2012年7月1日
今日から2日間軽井沢のセゾン現代美術館へ。以前軽井沢で喘息が治ったことがあったので今回も期待したいところだ。腱鞘炎はどこへ行けば治るのだろう。

古代ギリシャは白い文明だと思われていたのが実は極彩色だというのがイギリスの大英博物館の調査でわかった。ぼくの中の極彩色が古代ギリシャと結びついたがこの色はぼくの郷里織物の町の色でもある。

昨日の朝日新聞の書評には芸術関係の本が3冊も取り上げられていた。他のジャンルの評者もどんどん芸術に関心を持って芸術関係の本を取り上げてくれるのは大賛成だ。といってぼくは他のジャンルの本にはあんまり自信はないけれどね。


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