3月31日
今回の災害に対してメディアが伝える言葉の力の果たす役割は大きい。だけど言葉だけではない。復興の声が実現する頃、われわれ美術家の出番が控えている。美術は人間の根底から魂を揺るがす力がある。そんな美術に期待してもらいたい。
美術を観賞し、理解するためにはある程度の知識と教養が必要だ。 だがそれ以上に感性がモノを言う。今、日本人は感性に大きく目覚めようとしているように思われる。復興の原動力には感性が必要です。
3月30日
被災者の語る言葉の前では沈黙せざるを得ない。その沈黙の中で返すことのできるものはぼくの場合、創造のエネルギーしかないように思う。
今まで美術館や海外の企業からコミッション・ワークを頼まれることが多かったですが、最近は個人からの依頼が増え、例えば肖像画などですが、アンディ・ウォーホルは積極的にコミッション・ワークを受けていました。実はぼくも彼に依頼するつもりだったその矢先きに亡くなりました。
アーティストがアーティストに依頼することもあります。現にぼくも他のアーティストから依頼を受けています。
いつまでも自分の中の被災者意識と対話していても何も解決しません。被災者や被災地に対する想いを自分の仕事の中に導入するしかないと思います。
3月29日
午前中、書斎に篭って「ユリイカ」の連載エッセイ<夢遊する読書>の5回目を書きました。午後は野川の公園のベンチで書評用の本を読んでいました。土屋嘉男さんとこの公園で偶然会うことがありますが、今日は来なかったようです。野川の橋の下の鯉はますます大きくなって、1メートル近いのが何十匹といます。橋の上に立つと急に寄って来るのですが、今日はエサを持ってこなかったので、気の毒になり、早々に彼等の視界の外に移動しました。
4月9日から4月30日まで横尾美美が初の大阪での個展を開きます。
コウイチ・ファインアーツ TEL:06-6444-1237
http://www.kouichifinearts.com
○本日の寄贈本
幻戯書房より「白と黒の断想い」瀧口修造著
3月28日
成城のおそば屋で山田洋次さんに会う。初対面だった。以前新聞に浅丘ルリ子さんのリリーと寅さんの絵を描いた時、朝丘さんから電話で山田監督があの絵が欲しいと言っておられるということを聞いたが、そのままになって、今日その話になった。山田さんは渥美さんの絵がいいと言われたので、描くことを約束する。
午後は野川の公園で書評本の候補作を読む。3時頃になると少し風が出てきたのでアトリエに帰って細野晴臣から頼まれている肖像画を描く。まだ 2〜3日はかかりそう。
この間から整腸剤を飲んでいたら胸焼けが激しくなってきたので飲むのを止めて、胃薬を飲んでいる。薬の 副作用からどう逃れられるのか、われわれ素人にはわからない。
3月27日
事務所の周辺の野良猫の一匹、黒タマが最近部屋に入ってきて、椅子に腰掛けて疲れを癒しています。野良だったので鳴く機会がなかったらしく、ピェ-、ピェ-と変な声で、目下ウグイスみたいに鳴く練習をしています。でも音痴は生まれつき直らないかも。
3月26日
◯本日の寄贈本
救龍堂より「画家たちの二十歳の原点」救龍堂
昨日は岡山県立美術館と高知県立美館の学芸員の方達、それにデザーナーを加えてカタログの打ち合わせです。出品点数は109点です。オープニングは岡山は6月1日、高知は7月17日です。
3月25日
○本日の寄贈本
松岡正剛さんより「わたしが情報について語るなら」ポプラ社
筑摩文庫より「芸術ウソつかない」(対談集)の刊行準備中です。詳細は追ってお知らせします。
3月24日
岩手県佳子さん
長い間生活の不自由大変だったですね。復旧してよかったです。しばらくおかゆを食べていましたが、現在はお米が手に入りました。節電するためにアトリエは陽の入る窓際に制作場所を移動しました。(このことは以前書きましたね)ご心配の点は全部解消しました。
大友崇史さん
津波の被害一歩手前で食い止められてよかったですね。これからも大変だと思いますが、励んで下さい。
エリザベス・テイラーが亡くなった。高2の時彼女にファンレターを書いたら、手紙とサイン(ぼくの名も入っている)入りのブロマイドと、ぼくが切手コレクターだと知って世界から寄せられたファンレターの封筒の切手を沢山はがして送ってくれた。エイズ撲滅で来日した時、テイラーに会った。
3月23日
毎日気が重く滅入ります。といって現地の方たちの真の心情はなかなか理解できるものではありません。日本中が被災者に目と心を向けることがエネルギーの放射になればと思うだけです。
3月22日
大地震からの復興の意志やエネルギーが少しずつ見え始めてきました。このような新たな動きを見ていると、自分のアートをもう一度御破算にして、創造からではなく破壊から出発すべきだとつくづく思いました。
3月21日
16才の孫が80才の祖母を救い、9日振りで救出されたニュースに感動した。2人の生命に対する諦めない強い意志は被災者を勇気づける以前に、われわれの方が彼等に勇気づけられることが多い。
3月20日
久し振りで本屋に行く。昔は行く度に本を買っていたが、最近は滅多に買わない。家には本屋ができるほどあるので、この際、昔買った本を読むことにしている。この間から外出すると俳優の土屋嘉男さんによく会うようになった。ちょっとクセになる。今日は公園で会い、ベンチでココアを飲みながら話す。雨が降らないせいか野川の水が少ないので鯉が泳ぎにくそう。夕方までアトリエで描きかけの寺山修司の肖像画を完成させる。
3月19日
この三連休は大きい切り換えになる。早速制作体制に入った。とにかく描くことによってギアチェンジができ、自分の中の変化を確かめることができる。そのことで自分の中が冷却していく。でないと熱い作品が生まれない。
3月18日
○本日の寄贈本
平凡社新書より「ジョルジョ・モランディ」岡田温司著
今秋にコラージュ作品の個展をニューヨークの「フリードマン・ベンダ」ギャラリーで開催予定だが、全部新作を作る。そのコラージュの資料がギャラリーから大量に送られてきた。目下横浜トリエンナーレに出品の新作製作中だが、これが終わったら早速コラージュ制作に入る予定だ。その前に体調を整えるためにしばらく草津温泉で静養したい。
わが家の米が間もなく底をつきます。明日から米の量を少なくして、おかゆにしようということになり、妻はこの際ダイエットになると言っています。あとはいただいたせんべいなどをかじりますか。事務所もアトリエも昼間は節電で、絵は昼間に描くことにしました。しばらく耐乏生活ですね。
3月17日
ぼくの住む地域でも買いしめ、買いだめが横行しています。このことは被災者を援助する気持と全く反対の行為と感情です。ひとりひとりの自覚が必要だと思います。
世界の目と心が日本に向いている時、被災地でもない地域で、個人の欲望を満たすこの買いしめ行為は非常に恥ずべきことだとは思いませんか。現に水もミルクも食料もない被災地の映像を見ているでしょう。
日本を立て直すと同時に日本人個人の心を立て直すチャンスに変えるべき時期だという自覚が必要です。
海外の支援隊の救助活動が全くテレビでは報道されません。世界が日本を援助してくれている状況を報道することで、彼等もわれわれも勇気が与えられます。ぜひ海外の支援隊の活動を報道して下さい。平和の原理を伝えて下さい。
被災地の老人や病気の方々を見ていると、あっちが痛い、こっちが苦しいなんて言っておれなくなります。あきらめない生きる力を逆に与えられます。
○本日は寄贈本
河出書房新社より「マイルス・ディヴィス『アガルタ』『パンゲア』」中山康樹著
マイルス・ディヴィスの「アガルタ」について書かれた本です。マイルスがアルバム名を!といわれてぼくが「アガルタ」と付けました。「アガルタ」とは地球内部に存在するという伝説の王国です。
3月15日
こういう大震災に打ちのめされている時にこそ読むべき本は?という新聞の読書欄からアンケートを求められた。それぞれの考え、思いにより読書は異なるだろうが、こういう時だからこそ読むべき本を自分の目と足で選んでみて下さい。
○本日の寄贈本
平凡社より「別冊太陽/与勇輝」
3月14日
アメリカの友人から地震の見舞メイルが入った。アメリカのメディアでも相当大きく取り上げられているらしい。世界がショックを受けている。われわれの中の何かが弱くなったが、何かが強くなったように思う。日本の、自分の底力を発揮するしかない。地底のマグマの上に立っている人間の再認識をさせられた。
昨日は救急車で病院に。今日の診断の結果「異常は終了」したとのこと。自然はそのまま人間の身体につながっている。
3月13日
地震の経験は忘れないようにしたい。あんなことがあったという風に軽々しく終わらせたくない。
3月12日
高速から北東の空に長いピンクの雲がまるで火事のように燃えているので車の運転手さんに、「あれ地震雲みたいだ」と言ったら運転手さん、「高速で地震に合いたくないですね」と言った。この地震雲を見たのは2時20分頃だった。雲は2、3分で消え、あとは空が黄色に変わった。これは10数秒位。いつも持っているカメラはこの日はなかった。地震はビルの20階で遭遇した。窓の外のビルが左右に揺れた。「横浜トリエンナーレ」の記者会見が行われる15分前だった。20階だから揺れが激しく、7〜80人いた人達は床に座り込んでいた。横にいた外国人の女性は怖いから手を握って欲しいと言った。握っている間、怖いのだが、なんだか悲しい気持ちに襲われた。車で帰るまで7時間半かかった。あとの半時間は歩いた。「246」の歩行者の数はもの凄くふくれ上がった。頭も尻もわからないほどの大行進が続いていた。ガソリンスタンドやコンビニを見つける度に車から降りてトイレに行った。帰宅は午前12時前だった。
3月10日
日経新聞の「奇縁まんだら」に池田満寿夫の肖像画を描く。まさか彼の絵を描くとは思っても見なかった。かつての友人だから彼にプレゼントするつもりで描いた。前にも書いたかな?高校の亡くなったクラスメイトの肖像を郷里の風景の中に描き込んだ作品を描いていたが、年代と共に一人、二人と彼岸に旅立つ。すでに三点描いているが、もう打ち止めにしてもらいたいなと思う。
午前中熱があったが、午後制作に入った途端熱が下り始めた。いわゆる創造のエネルギが活性化したのだろうか。以前入院した時、 病室で制作したらたちまち快復したことがあった。先生は他の病人にも絵画療法を取り入れるといいかも知れないと言われた。
現在制作中の作品は今までの作品と全く異なるタイプの絵だ。何か得体の知れない森の中に入っていくような不安と恐怖と期待と快感を同時に味わっている。いつもこういう状態だと「生きてる」を実感する。
3月9日
ツイッターでも報告しましたが、前立腺肥大で突然尿が出なくなりました。前夜、滅多(年に一、二度)に服用しない睡眠薬の復作用がどうやら原因のようです。来週月曜日に2度目の検査があります。
箱根のポーラ美術館のアンリ・ルソー展に行けなくなりましたが、最終日にはなんとか駆け込みたいと思っています。
3月8日
昨日、突然尿が出なくなって急いで病院に行くと前立腺肥大といわれ、月曜日に検査することになった。本当になんの前触れもなく突然起きたのです。男性はある年令に達すると前立腺疾患の可能性は大いにあります。気をつけて下さい。
○本日の寄贈本
祥伝社文庫より「地獄花」(団鬼六著)
30代の前半ビクターのゴールデンコンビの作詞、作曲家(南国土地を後にして)によってこの本と同じ題名の「地獄花」(A面)という演歌のレコーディングをしたことがあるが、その直後交通事故に遭い、B面の「あぁ故郷に帰りたい」が歌のレコーディングをしないまま、入院期間が長くとうとう発表されることはなかった。
3月7日
土日はブログもツイッターもお休み。野良猫のエサもお休み。制作だけはお休みなしでした。この間の歯痛も一日で治り、昨日は腹痛。今日は何痛?かな。今年は特に連続展覧会ブームになるので、「元気」でいるしかない。老人は努力がニガ手だから、無理しないようにするしかない。
3月4日
◯本日の寄贈本
西川隆範さんより「社会改革案」ルドルフ・シュタイナー著/西川隆範訳
こんど筑摩書房の文庫で対談集「芸術ウソつかない」が発刊されることになりました。発行日が決まれば詳細をお知らせします。
長い間行方不明になっていた事務所周辺の野良猫のもう一匹の子供がヒョッコリ姿を現し大歓声を上げました。姿が消えて3ヶ月くらい経つと思いますが、よく命を落とさないで今日まで生きていたものです。それにしても、何処に?そしてよく帰ってきたものです。これで全員5匹揃いましたが、派閥ができた模様。
3月3日
◯本日の寄贈本
青幻舎より「北斎漫画 <全三巻> 第三巻「奇想天外」/
「北斎漫画 <全三巻> 第二巻「森羅万象」
「北斎漫画 第三巻「奇想天外」には解説(インタビュー)を書いています。絵を読むという言葉があるが、絵はあくまで見るものだ。
3月2日
毎朝米粉パンを食べています。何にいいのか知りませんが、日本人には小麦粉よりいいと聞きました。蒸しパンにしてバターなり黒ゴマのクリームなりをつけて食べています。モチモチしてぼくは好きですが、種類は少なそうです。値段はやや高目。
事務所の中に野良猫が2匹入ってくるようになりました。猫に人間が信頼されたようです。
親知らずが抜けてから、歯は全く痛くなくなったが、今日は親知らずの跡辺りがチクチク痛むが、もしかしたらチョコレートの食べ過ぎかな?といっても板チョコ朝と午後合わせて2ピース位だ。それにしてもこの間明治のブラックという板チョコをコンビニで買った。100円だったけれどこんなに安いものかな。ふと今朝パッケージを見たら賞味期限が去年の11月だった。賞味期限切れの食品を売っていいのかね。だから歯が痛くなったのかな。
3月1日
昨日は細野晴臣さんが来てアトリエで雑誌「エココロ」の対談をする。音楽についてなのだが、60~70年代は結構ロックにこっていたのだ。熱い時代のことを語るとついつい熱くなった。2年も前から頼まれていた細野さんの肖像画のアイデアがまとまり、細野さんも気に入ってくれたので、いよいよ制作開始だ。ちょっと、いや、かなり面白い絵になりそうだ。
○本日の寄贈本
赤石壽美さんより「抒情の系譜-谷内六郎の世界」赤石壽美(岩波ブックセンター)
この本の中には谷内六郎さんとの交遊の一端が述べられている。谷内さんが「週刊新潮」の表紙の<青い空>ばかり描きたくない、これらとは別の創造的な油絵を描きたいといった話がこの本の最後の何頁かに書かれている。谷内ファンはぜひ読んでみて下さい。
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